信州便りー1 知識階級の思考停止症候群

 5〜6年前、ある大手自動車会社の広告で「我が社は循環型社会形成の為に自動車のリサイクルに力を入れており循環型社会が形成されれば環境問題は解決する」と書かれていました。そこで、講義で自動車のリサイクルの話をした後この広告は正しいかと質問してみました。150人のほぼ100%の学生が正しいと答えました。正しくないと答えた学生は皆無でした。

予想はしていましたが、改めて循環について基本から説明しなければと思い、山手線と鈴鹿サーキットを例に循環を説明し、それから地球の自然の循環の講義に入りました。循環にはエネルギーが必要であること、自然界ではその役目を太陽や地球の様々なエネルギーが担っていることを説明し、最後に再び、今度はミニテスト形式で問ったところ、大半の学生は解ってくれたようでした。

環境系の大学ですが、テレビや新聞の環境記事を鵜呑みにしてこれは少々おかしいぞと自分で考えようとしない。しかし、これで学生を責めるのは少々酷かもしれません。なぜなら、同じようなことをテレビで大学の教授が堂々と喋っているからです。日本に、取り分け知識階層に、蔓延する思考停止症候群とでも言うべきでしょうか。

また、数年前、ある大学の講演会で地球温暖化の話をした時も、若い理学系の研究者が「人為的温暖化物質の排出による地球温暖化はもう常識である」と反論してきました。私は「あなたが何故そう思ったのか」と聞いたところ、IPCCのホッケイスティクモデルを持ち出してきた。あなたは「このモデルをご自分で検証してみたのか」と問うと、「その必要はない世界の科学者が認めているのだから」と答えました。この若い研究者は科学の本質を知らないし、思考停止症候群に陥っていると思いましたが、それを言う気力も失せていました。

もったいない学会は枝葉ではなく幹と根を自分の考えを基盤として議論できる今の日本では大変ユニークな学会であると思い入会いたしました。

 

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