何故スマートアグリがTPP交渉のこの時期に出てきたか

何故スマートアグリがTPP交渉のこの時期に出てきたかについての考察です。

TPP交渉推進勢力が国会では絶対多数ですので「先進工業国日本に食と農の自給は必要か」が命題として浮かび上がってきます。以下は私なりの見解です。

 戦前日本の農村は病気の時治療が出来ないほどの非常な貧しさの中で生活していたわけですが、敗戦後の農地解放と財閥解体により純粋な競争原理が働き、農業と産業の共存する先進工業国日本が創造されました。

 しかし先進工業化した今、産業資本から見て不採算部門としての農を切り捨てる道も当然視野に入ります。農は経済成長重視の産業部門から見ると低成長の不採算部門で、TPPは一つのチャンスとして生活に直結する食と農の切捨てと変性が計られているかと思います。 

しかし「食と農は古よりヒトが生きていくための基本で、経済成長の指標の一つとして考えてはいけない」というのが私なりの考えです。食と農の安全は生命が長い時間を掛けて、今日の状態を作り出してきたためです。結論を述べます。

1.食と農は地域において優先して大切にする必要があります。:食と農は古来からヒトが生きていくための基本で、地域が生き延びていく基礎であったと考えられます。高だか250年の歴史しかない現代資本主義的経済が、経済成長の指標の一つとして農の低成長を評価し切捨てを考えてはいけません。石油ピーク後の不安定化する世界において、むしろ積極的に食と農の新たな広がり(地産地消運動等)を創る時期ではないかと考えられます。

2.農には基本的にあらゆる技術適用が必要とされます。:ただし非永続的な技術(遺伝子組み換え技術、多様な農薬散布)のような健康や生態系へのリスクの予想される技術適用は避ける必要があります。汎用性のある有効技術は、農作業事故や生態系の劣化を招かない工夫を施しながら積極使用していくことが望ましいと考えられます。

3.将来の展望ですが、日本においては兼業農家、特に退職後の世代が農を支えています。この世代の食と農への貢献を積極的に評価し支援する必要があります。スマートアグリ的技術は必要ですが、投資対効果の企業的観点が必要とされます。現在日本農業の中心を占めている資本力の無い中小農業や弱小園芸は除外される運命を持っています。しかし投資に見合った収益は国内外の厳しい産地間競争の挙句に得られるため、農業経営への不安を解消するのは容易ではありません。

今後は全国民を対象に各自の食を支える家庭園芸について積極評価し技術支援する必要があります。日本においては食と農の問題を「大切な生きる糧としての安心・安全な食と農」として捉えなおす必要があります。

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