現代文明の血液:石油の基礎知識(3)

8.石油の分類:イージーオイルとハードオイル
「石油は現代文明の血液」です。それは在来型石油の有する余剰エネルギーが極めて大きく、しかも安価であるからです。その安価な石油が2005年に生産ピークに至り、価格も100ドル/バーレルにはいりました。よって石油文明の成長が困難になってきました。血液である石油が安くないと、言い換えれば石油のEPRが10以上をキープできないと、石油依存の文明活動がスムーズに回りません。
EPR=生産されるエネルギー】÷【生産するのに必要なエネルギー
で表します。

下の右図は、米国の石油生産推移について、シェル石油のハバートが予測した曲線(左)と実際の生産データのグラフです。ハバートの1959年予測通りに、1971年に米国は石油ピークを迎えました。当時の米国の石油のEPRは30です。その後、低下の一途で、現在はイージーオイルのEPRが10以下とのことです。

そこで、従来からの区分「在来型石油」「非在来型石油」にとらわれず、石油ピークに至った現在、イージーーオイルとそうでないものに区分した方が良いと思って、添付の表を作成しました。EPR、採油コストは油田によって異なるので、だいたいの値です。 イージオイルとは、開発・生産が容易な、したがってEPRが高く、生産コストの比較的安い在来型石油のことです。イージーオイルが石油文明を創ってきましたが、これに対してEPR<10の石油・ガスをハードオイルと名付けました。
シェールオイル、オイルサンド、メタンハイドレートは、石油文明を支える代替ではありません。イージーオイルの生産が減退を始めると、イージーオイル自身のEPRがさらに減少して、ハードオイルの仲間入りをします。もちろん、文明を支えてきたイージーオイルの減耗をハードオイルで埋め合わせできません。
人類の文明は早晩、石油依存から脱却することになります。石油を大動脈の血液として使う中央集中・広域展開型の文明が維持できなくなります。再生可能エネルギーによる地産地消型の低エネルギー社会文明へ移行せざるを得なくなります。
地域主義低エネルギー社会では、現代社会を創った石油のようにEPRが突出したエネルギーはありません。数百年先の子孫たちの時代になっても、再生可能エネルギーと組み合わせて、残余のハードオイルを少しずつ使っていくことになると思います。そのようにハードオイルを残してのが、ホモサピエンスの知恵であるはずと考えます。

9.シェールオイル/ガス  
根源岩の中で分散付着したシェールオイル/ガスを生産するには、オイル/ガスのある地層内に、タコ足状に水平坑井掘削し、水圧破砕で導通路を作り、薬物投入して石油/ガスの流動を良くして地上へ採ガスします。地層破壊・地下水汚染までして多量の生産エネルギーが必要で、明らかにEPRが小さい。
米国内での天然ガス開発は、陸上自噴ガス開発、海上自噴ガス開発、それから陸上非在来型ガス開発(タイトサンドガス開発⇒コイルベットメタンガス開発⇒陸上シェールガス開発)の順番です。メキシコ湾での海上自噴ガス開発が、大水深化するにつれてEPRが悪くなり、そのために、EPRの悪い陸上非在来型ガスがビジネスになってきました。  
米国では、陸上自噴ガスが1990年代にピークにいたりましたが、ピーク前のガス価格は、1MCF当たり2ドル以下でした。現在需給逼迫なときは8ドルくらいで、陸上シェールガスの生産コスト$5だとビジネスになります。  しかし最近のガス価格の低下(3ドルくらい)によって、シェールガス単独の開発は急減しています。シェールオイル開発のついでに産出されるシェールガスが、パイプライン網に送り込まれています。  
非在来型のシェールオイル・ガス開発は、石油価格が60ドル/バーレル以上になると、採算がとれると、1990年代から予想されていました。現在は、すでに100ドル以上の時代であり、なにも「シェールガス革命」と壮語するのは滑稽です。シェールガス・オイルは文明の主役に成れません。  高価になっても使える富裕層のエネルギー資源と言えるでしょう。

10.メタンハイドレート
  日本ではメタンハイドレートが日本近海に100年分の天然ガスが期待される非在来型天然ガスとして、政府機関によって大きく報道されています。 メタンハイドレートは特定の温度・圧力条件によって作られるメタンガスと水の結晶です。永久凍土地や深海底の浅部で、世界の多くの場所で存在しています。しかも、メタンハイドレートは化学的に安定しており、エントロピーが高い状態で地球の中に存在しています。
メタンハイドレートは稠密性が高い結晶の層なので、在来型天然ガス田のシールとして期待されます。しかし、日本近海では調査の結果、メタンハイドレート層の下に天然ガスが集積している場所はありません。 そこでメタンハイドレートの結晶の中にあるメタンをガスとして採取することに着目しました。
メタンガスを遊離して採取するには、結晶の化学的安定を壊さなければなりません。そのために地層の圧力を人工的に減圧しますが、そのためにエネルギーを多消費します。また減圧操作によって、岩石になっていない深海堆積物の結合状態を緩める危険があります。日本を含めていくつかの国の研究機関で検討されていますが、エネルギー収支比が1以下である現状から診て、技術によってEPRが格段に上昇することはあり得ません。なぜならメタンハイドレートの地下での産状がエントロピーが高い状態だからです。
メタンハイドレート結晶の中のメタンガスを採取することは、商業性がほとんど期待され得ないと判断されます。 

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