日本版FITの問題点(5)

 以上、日本版FITが、単に買取価格だけでは判断できない問題を孕んでいる事を指摘した。「神は細部に宿る」のである。これらの問題に躓いて今後、倒産する発電事業者も出てくるものと思われる。倒産しないまでも計画の見直しが相次いでおり、何時までたってもドイツに追いつけないだろう。

最後に、21世紀の電力系統について、私なりのビジョンを描いておきたい(1)。分散型電源はインターネットに対比されるが、その本質は「電源の双方向化」である。

電力系統のトポロジー変化

従来の電力系統は、発電->送電->配電、と電気の流れは一方向であった。それに対し、分散型電源では、送電<->配電(発電)、という構造に集約されるのである。これは、インターネットにおける、幹線系<->アクセス系、と同じ構造である。従来の1次側、2次側という概念も見直しが必要となる。

ある配電系統内での分散型電源による発電量が、消費量を上回ると、その系統は、「発電所」と同等と見なされる。配電用変電所の逆潮流を認める規制緩和が予定されているが、「電源双方向化」に向けての記念すべき第一歩とみなす事ができる。
www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2013/05/250531-1.html

インターネットの場合、幹線系はパイプラインであって、情報のやりとりをしている主体は、アクセス系に繋がっているサーバや端末である。電力系統の場合も、発電と配電を同時に送電ネットワークから分離する事により、供給主体と需要主体が明確となり、価格競争の促進が期待できる。

例えば、営業所単位で価格交渉を行った方が個人でやるよりも交渉力がある。ここで注意すべきなのは、配電と小売は一体であって、分離する事はできないという点である。電気を売るのに電線は不可欠であって、電力会社においても、配電は営業所に置くのが一般的である。


66kV以上の送電ネットワークは、配電事業者や、発電事業者が支払う「接続料」で運用される。これは、インターネットの幹線系が、アクセス系からの接続料で維持されているのと同じである。ただ「接続料」に「電力料」が付加される点が、通信との違いである。送電(幹線系)と配電(アクセス系)は、配電用変電所の送電側(66kV, 77kV) を責任分界点として分離される。

電気機器側での対応

インターネットでは、アクセス系の光化(FTTH)と、幹線系の波長多重化(WDM)によりブロードバンドが実現したが、電力系統においても、電力会社をまたがる超高圧系統の強化とともに、20kV級配電技術を用いてアクセス系統を抜本的に強化し、メガソーラーや風力発電を低コストで連系できるようにすべきである。

またバッテリー技術が注目されているが、電気機器側での対応も重要である。昔は、50Hz/60Hz と周波数が変わると機器が使えなかったが、最近は周波数だけでなく、海外の電圧に対応できる機器も多い。自然エネルギーの不安定さを克服する電気機器の開発が期待される。不安定な電源に適応できる電気製品は、今後の世界市場において競争力を持つだろう。

それに伴い、電気事業法の電圧規制101±6V(202±20V)についても、100±12V(200±24V) 程度に緩和されるべきである。系統連系ガイドラインの見直しも必要となる。
www.enecho.meti.go.jp/denkihp/genjo/rule/keito_index.html

自然エネルギー社会

最近、原発再稼働を目的として、自然エネルギーを批判する向きもある。しかしウラン資源も化石燃料と同じく有限であり、高速増殖炉計画が頓挫する中、「純国産エネルギー」 としての自然エネルギーの拡大は日本にとって必須であり、世界の潮流でもある。

自然エネルギー社会では、現在のように誤差1分以内で電車を運行したり、24時間営業のコンビニエンスストアは無理があるだろう。しかし電気事業が始まってまだ100年余りであり、それまでは電気無しで生活してきた訳であるから、自然エネルギー社会に我々が適応する事は案外、可能ではないだろうか?

深夜労働者にガン発生率が高いというデータもあり、太陽に合わせた「晴耕雨読」の生活を取り戻すべきであろう。日本民族は元々、自然と調和して生きてきた伝統を持つのであり、21世紀の自然エネルギー社会をリードして行きたいものである。

筆者は、配電の現場を離れて久しく、最近の文献や海外の状況等についても十分に把握している訳ではない。誤解している点も多々あると思われる。コメント頂ければ幸いである。


(1) 大前研一氏も電力再編案を提起しておられる。高圧送電公社を3000V以上とするなど(高圧受電は6600V)、誤解されていると思われる点もあるが、より良い電力システム改革に向けて、こういった議論を積み重ねていくべきである。

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