日本の石油ピーク=文明基盤の崩壊が始まっている

石油ピークの既存モデル
北朝鮮とキューバは、旧ソ連圏の崩壊とキューバに対する米国の経済封鎖の強化によって、石油ピークをいち早く、突然に経験した。そして両国は、その解決策の違いによって、文明崩壊と文明改革の両サイドのモデルを、世界にプレビューしたといってよい。北朝鮮は石油文明の延命に固執した。キューバは石油文明と縁を切り、生態循環を基本にした低エネルギー文明の建設に入った。どちらの選択が、国民の生存と安心の道になっているかは、事実が証明している。
石油ピークとは、EPRの高い石油の供給が需要を満たさなくなる事態であり、従って石油の市場価格は必ず高騰する事態を意味する。BRICsとさらに続く諸国の工業成長にも関わらず、2005年以降の世界の石油供給量は概ねフラットで推移している。その一方で、石油価格はファンダメンタルが急騰し、プレミアムがその上で踊って、2008年夏に147.7ドル/バレルに至った。これは石油ピークの価格面での典型的現象であり、そのため日本では、漁船の出漁停止、自動車交通量の減少などに現れた。急騰から急落に転じたから一時的であったが、急騰した価格が継続すると、日本の漁業、交通システムなどは文明的な転換に直面したはずである。イージーオイルの供給が逼迫してきているが、未だ絶対的不足の領域でないだけのことである。
イージーオイルの価格はいくらか
石油ピークの説明として、イージーオイルである既発見の石油の生産ピーク、在来型石油の生産ピークといわれる。では、イージーオイルとは具体的にどういうことか。石油価格で表して、30ドル/バレルなのか、60ドル/バレルなのか、100ドル/バレルなのか、はっきりしない。イージーオイルは、産業によって異なるはずである。感覚的で恐縮だが、200ドル/バレルになると、長距離陸送、船舶輸送、空輸が出来なくなるのではないか。150ドル/バレルだとマイカーはもてなくなろう。100ドル/バレルだと、石油依存農業が深刻になろう。とりわけ温室栽培、植物工場栽培は採算割れするのではないか。
日本は既に文明転換期に入っている。このままでは・・・
このようにイージーオイルの価格的限界は産業によって異なる。しかし、文明の基本である石油依存型農業が最も早く、その限界を受ける。三重県科学技術振興センターの資料の中に、花卉・野菜温室栽培に関する重油価格と農業所得の関係表がある。それによると、重油31円/㍑(2004年)と83円/㍑(2008年)での農業所得が、観葉植物栽培で60%減少、ミカンで70%減少とのこと。秋田県農業地帯のシンビジウム栽培農家に尋ねると、「採算割れで、今後のことを考えて、息子に農業を継がせない。あと10年するとこのあたりから農家がなくなろう。」と語った。まさに石油農業の崩壊である。なにも秋田県に限ったことでなく、全国の農村で進行していることである。
秋田県には温泉、地下水(最近、地球熱と呼んでいる)が豊かである。石油依存温室から、この地球熱利用の温室へのエネルギー転換、すなわち自然エネルギー利用の低エネルギー化が重要な方策だと思っている。
余剰食糧が文明継続の基盤である。その農業が音を立てて崩れつつある。為政者は石油ピークを正しく認識して欲しい。この文明的危機を認識できない国にはクラッシュが待っているだけである。
イージーオイルのファンダメンタル価格と、農業はじめ各産業の限界との関係を精査すること。これもエネルギー科学のひとつのミッションだと考える。

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