拝啓 原子力規制委員会次期委員長更田豊志殿;  原発の絶対の安全は原発を動かさないとの科学技術の原理に基づいて正しいエネルギー政策を進めて下さい

東京工業大学名誉教授 久保田 宏

(要約);
① 原子力規制委員長に更田氏 政府が提示 安全工学の専門家(朝日新聞2017/4/18の記事です)
② 安全性を争点とした原発再稼動を巡っての裁判では、原子力規制委員会が安全と認めた原発の再稼動が順次認められています
③ 原発についての安全は、「原発を持たないこと」、これを政府に勧告して頂けるのは、安全工学の専門家、次期原子力規制委員長の更田氏以外にありません
④ 原発電力無しでも、いま、日本は電力に不自由していません。核燃料廃棄物や廃炉の処理・処分費を含まない上に、いま、日本が安全対策費を含めて高価になった原発電力を使わなければならない理由は見つけられません
⑤ 放射能汚染のリスクを増大させる再稼働を含む原発の所持は、次世代に、測り知れない負の遺産を押し付ける、許しがたい現代人による犯罪行為です。
⑥ アベノミクスのさらなる成長のための原発の再稼働は、日本経済を破綻の淵に追い込むことは間違いありません
⑦ 安全性を問題にする限り、原発は不要です。原発無しで、日本のエネルギー問題を解決し、日本経済が生き延びる道を政府に示して頂くことが、次期原子力規制委員長の更田氏のお役目だと考えます

(内容の解説);
① 原子力規制委員長に更田氏 政府が提示 安全工学の専門家(朝日新聞2017/4/18の記事です)
この新聞記事によると、「政府は、18日午前、今年の9月18 日に任期が満了する田中俊一氏の後任に、更田豊志氏を起用する国会同意人事案を示した。衆参両院の本会議で近く与党の賛成多数で合意され承認される見通し。」とあります。
同紙は、さらに、「更田氏は東京工業大学から日本原子力研究所に入り、事故時の核燃料の挙動など原子力の安全工学を一貫して研究してきた。2012年の規制委発足時に規制委員についた更田氏は東京電力福島原発の廃炉監視チームや、新規制基準に基づく原発の審査を率いてきた。歯に衣消せぬ物言いにも定評があり、規制委の委員長代理として田中委員長を支えていた。」と更田氏の経歴を紹介しています。

 

② 安全性を争点とした原発再稼動を巡っての裁判では、原子力規制委員会が安全と認めた原発の再稼動が順次認められています
いま、政府は、3.11 の福島第一原発の過酷事故により稼働を停止している原発について、新しい安全性についての規制基準を満たしていると原子力規制委員会が認めたものを順次、再稼働させようとしています。これに対して、原発再稼動反対を訴える人々は、規制委員会が安全と認めた原発でも安全とは言えないとして、原発の安全性を争点として現地住民を原告として、再稼働停止の差し止め請求を裁判に訴えています。
この裁判の結果は、安全性を巡る判事さんの判断に左右されていますが、科学技術の知識のない判事さんの判断で、現在、政府が求める再稼働が次々と認められています。

 

③ 原発についての安全は、「原発を持たないこと」、これを政府に勧告して頂けるのは、安全工学の専門家、次期原子力規制委員長の更田氏以外にありません
新しい規制基準が守られた原発は、本当に絶対に安全と言えない証拠として、この安全性の新基準のなかには、万が一の事故の際の住民の避難訓練の実施が義務付けられているようです。
原発についての絶対の安全、それは、「原発を持たないこと、すでにある原発を動かさないこと」です。これは誰にでも判る科学技術の常識です。この常識を政府に教えて頂けるのは、原子力規制委員長の後任の更田さん以外にありません。

 

④ 原発電力無しでも、いま、日本は電力に不自由していません。核燃料廃棄物や廃炉の処理・処分費を含まない上に、いま、日本が安全対策費を含めて高価になった原発電力を使わなければならない理由は見つけられません
3.11福島の過酷事故以前、日本の一次エネルギーの総量のなかの原発電力の比率は、1/8 程度にとどまっていました。この程度の量であれば、国民の省エネ努力で、何とか、原発を再稼働しないでも済ますことができます。実際に、現在の日本では電力に不自由していません。3.11 の直後、原発代替の火力発電用の化石燃料の輸入金額が3兆円程度増加しましたが、それは、石油危機以前にバレル2ドル以下の水よりも安いと言われた中東石油を用いた火力発電から、石油危機以降、相対的に安価になった石炭火力発電への変換が遅れたのが原因です。さらに、この石炭火力への変換の遅れに拍車をかえたのが地球温暖化対策のCO2排出削減のためとして石炭が嫌われ者にされたからです。いまでも、発電用に高価な石油を使っている先進国は、日本以外にありません。電力は当分安価な石炭に依存し、この石炭の価格が高くなってから、安価な再エネを選択して、使って行けばよいのです。

 

⑤ 放射能汚染のリスクを増大させる再稼働を含む原発の所持は、次世代に、測り知れない負の遺産を押し付ける、許しがたい現代人による犯罪行為です。
3.11 福島第一原発事故の後始末の目途が全く立っていません。なかで、廃炉の処理・処分に要する時間と費用が際限なく膨らんで行きます。また、放射能汚染で故郷を追われた人たちの苦痛は、賠償金の額で判断できない大きなものでしょう。安倍首相は、原発の再稼働を進めるためにも、この原発事故の被害をできるだけ小さく見せたいために、避難指定地域の除染を急いで、避難された方々の帰郷を促していますが、それに応じられない人が沢山います。この人達の苦しい胸のうちを理解できないだけでなく、それを自己責任だと非難する人が復興大臣を務めていました。
これらの3.11 事故による直接の被害だけではありません。今まで稼働していた原発の核燃料廃棄物や廃炉の処理・処分もなされないままです。これらの原発所持の後始末のために莫大な費用の負担が次世代に委ねられることになります。
すなわち、再稼働を含む原子力エネルギー生産の継続は、次世代への測り知れない負の遺産を積み残す、現代人による不条理な犯罪行為と言わざるを得ません。

 

⑥ アベノミクスのさらなる成長のための原発の再稼働は、日本経済を破綻の淵に追い込むことは間違いありません
政府は、いま、このような不条理を冒してまでも、遮二無二、原発の再稼働を進めています。それは、政治権力を維持するためのアベノミクスのさらなる成長のためには、そのエネルギー源としての原発電力の確保が欠かせないとしているからです。
しかし、このさらなる成長のための財政出動を行うアベノミクスは、世界一と言われる財政赤字を積み増して、やがて崩壊します。当然、原発の後始末のためのお金は何処からも出てきません。いま、日本経済は危機的な状況にあるのです。

 

⑦ 安全性を問題にする限り、原発は不要です。原発無しで、日本のエネルギー問題を解決し、日本経済が生き延びる道を政府に示して頂くことが、次期原子力規制委員長の更田氏のお役目だと考えます。
同じ東京工業大学で、科学技術の社会的責務を学んだ先達の声に耳を傾けていただくことを伏してお願い致します。
なお、本稿の私のお願いに関連して、詳細は下記をご参照下さい。

久保田 宏、平田賢太郎、松田 智;改訂・増補版 化石燃料の枯渇がもたらす経済成長の終焉――科学技術の視点から、日本経済の生き残りのための正しいエネルギー政策を提言する――電子出版 Amazon Kindle版 2017年2月5日:https://kdp.amazon.co.jp/bookshelf?ref_=kdp_RP_PUB_savepub

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