信州便りー2 ある農業者のTPP感

長野県の片田舎での生活を初めて3年、有機栽培に奮闘している何人かの農業者と出会った。毎週一回付近の森の中の喫茶店に集まりお喋りをする。

長野県は農家数全国1位13万戸、全国33位の小規模経営耕地面積64a/戸、全国5位の耕作放棄地面積12%(全国平均は3.5%)、そして高い中山間耕地率60%(全国平均は43%)の農業県である。私の住んでいる蓼科高原は八ケ岳溶岩扇状地で5-10/1000 の緩い地形勾配があり、そこに溶岩台地の土地改良を行って棚田状の農地を形成している。

そうした悪い環境の中で米を作り、野菜を作り東京などの都会の食料補給基地となっている。有機栽培のお米は人気があり東京の一流ホテルに出荷している。しかし、私も時々手伝うが、有機栽培の耕作は非常に大変である。殆どが50歳以上の人達である。若い人は収入が少ないこの辺りの農業には寄りつかない。

先日お喋りの時TPPについての感想を聞いてみた。意外にも「チャンスだ」と言う。Sさんの考えは「環境、エネルギーの両面から今の農業は何れ行き詰まる。日本ではTPP対応策として耕地を集約して米国と競走しようとする大規模農業化の流れがあるが、これでは、環境、エネルギーの両面でますます悪くなるばかりだ」。日本の農業は量ではなく質で勝負すべきだという考え方である。

彼は農業家として農作物生産に凄まじいばかりのエネルギーが使われていることを経験で知っている。ではどのような対策が必要かという私の質問に対しては、将来の日本を救うのは農業に情熱を燃やす若者の育成と支援だと答える。実際、彼は東京の農業系大学の若者を毎年招いて自分の農地で体験学習を続けている。

問題は支援だ。今の政府が考えている個別所得補償制度など飛んでもない、本当に日本を農業の面から良くしようと情熱を燃やし身体に優しい農作物作りに精を出すこれからの若者たちこそ集中的に支援すべきだ、そういう細かい農業政策作りこそ国の役割だ、と言う。

 
私の家ではSさんの畑の野菜をいただき生ゴミを上げている。曲がった大根、曲がったキュウリだが愛嬌があってしかもとっても美味しい。
 

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