「エネルギーの科学」の薦め

日本に、本当に国民のためのエネルギー政策、戦略があるのでしょうか。どれも我田引水の税金依存の既得権益のように見えますが。

そこで私は最近、「エネルギーの科学」が必要と主張しています。 もったいない学会、産総研、大学の仲間と総合思考を、社会科学も巻き込んで、脱石油戦略は「低エネル ギー社会」と訴えています

その趣旨ですが、産業技術総合研究所の大久保泰邦氏の文、下記をご覧ください。  

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「エネルギーの科学」 
 大久保泰邦 2010年10月15日

持続性の評価軸の必要性
エネルギーの主流の評価軸はコストである。エネルギーコストは、開発に使うインフラのコスト、インフラの利用率、土地代、人件費など人間社会の要素によって決まる。つまりコストは、人間社会における価値であるので、エネルギーをコストで評価するという意味は、その時、その場所での人間社会における価値を見ていることになる。

エネルギーは有限であり、人類が今後エネルギーに依存する文明を維持しようとするのであれば、エネルギーの持続性の視点が必要である。コストを評価軸にした場合、時には持続性を無視して現在の価値を優先させることが起き、持続性の視点が欠落する。

そこで長期的な視点からエネルギーの持続性を評価する「エネルギーの科学」が必要になる。
 

エネルギーの科学

現代の文明は石油を主体としたエネルギーによって支えられている。エネルギーの成長がそのまま経済成長となる。特に石油は常温で液体であることから最も利便性の高いエネルギーとして、輸送用に利用されている。また肥料や日常品の原料ともなっている。すなわち現代は石油文明と言える。

21世紀に入り石油の生産が翳りはじめ、深海底油田やオイルサンドなど、開発が難しい非在来型石油の開発が進んでいる。陸域にあり大規模な中東の石油は、開発のために要するエネルギーは小さい。それに対し非在来型石油は、開発するために多くのエネルギーが必要となり、リターンが少ない質の悪いエネルギーである。しかし今日、このような質の悪い石油を開発することによってなんとか石油文明を維持している。石油生産ピーク、すなわち石油ピークは現実のものとなりつつあり、脱石油社会のあり方について世界は真剣に考え始めている。

脱石油文明におけるエネルギー源として現実的に考えた場合、非在来型石油に加え、原子力発電と水力、地熱、太陽、風力、波力、潮力などの自然エネルギーである。

エネルギーの科学は、上記のエネルギーの量と質を研究する。エネルギーの質とは、コストではなく、エネルギーを開発するために必要なエネルギーと採取されるエネルギーの比、エネルギー収支比(EPR)である。EPRは、開発対象地域の条件によって異なるので、対象とするエネルギーの種別だけでなく、地勢、利用する技術やインフラ、時代、環境への配慮の程度によって変わるものである。

具体的な開発対象を定め、量やEPRを算出するために必要なデータを収集し、全体のシステム設計を行い、それらに基づいて、多角的に質を分析する。データは地質構造や地形などの地球科学データの他、周辺産業、人口、需要などの社会に関するデータである。

EPR
が高いにも拘わらず、コストが高いことが導入のボトルネックになっているということは、長期的には有効なエネルギーであるが、短期的には利用する技術、インフラ、人材などに課題があることを意味する。

研究の成果は、政府に対しては、技術開発予算計画、導入のための補助制度の立案に貢献する。自治体に対しては、地域における利点や課題の抽出に貢献する。企業に対しては、必要な技術の抽出に貢献する。

さらに、エネルギー導入は新しい社会を築くことであり、社会的課題でもある。そのため市民の参加が重要となる。公正なデータを提示し、市民にエネルギーへの理解を促し、コンセンサス作りを推進し、長期的な視点からのライフスタイル提示に貢献する。

「エネルギーの科学」関連記事の紹介
このサイトでは「エネルギーの科学」に関する記事を紹介する。具体的には以下である。
・在来型、非在来型石油開発の実態に関する記事
・原子力に関する記事
・水力、地熱、太陽、風力、波力、潮力などの自然エネルギー開発に関する記事
・バイオ資源開発に関する記事
・資源開発が環境に与える実態に関する記事
EPRの研究に関する記事

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